ナットウキナーゼ活性度測定法
― フィブリン分解法 ―

原理
本法は、フィブリンにナットウキナーゼが作用する時、ペプチド結合の分解に伴って増加する酸可溶性低分子分解産物の量を紫外部( 275 nm )における吸光度を測定して定量化する方法である。


活性度単位
操作法に従って試験する時、酸不溶性物質を除いた反応液の 275 nm における 吸光度を1分間に0.01増加させる酵素量を1単位( FU )とする。


試薬

(1) 0.05 mol/L ホウ砂緩衝液( pH 8.5 、塩化ナトリウム含有 ) 四ホウ酸ナトリウム(10水塩) 19.07 g及び塩化ナトリウム 9.0 gに水約900 mLを 加えて溶かした後、濃塩酸で pH 8.5に調整し、水を加えて1000 mLとする。


(2) 0.2 mol/L トリクロロ酢酸溶液 トリクロロ酢酸 32.68 gに水を加えて溶かし、1000 mLとする。


(3) 0.72 % フィブリノーゲン溶液    0.05 mol/L ホウ砂緩衝液10 mL を三角フラスコに量り取り、これにフィブリノーゲ ン(シグマ製、フィブリノーゲン フラクションⅠTypⅠ-S、牛血漿由来、 PRODUCT NUMBER F8630)96 mg を加え、暫く放置し溶解させる。溶けきらない ものはガラス棒等で磨り潰しながら完全に溶解させる。溶解後、ろ紙(アドバテッ ク、No.6 、7 cm)でろ過し、浮遊物を取り除く。用時製する。 (注1)


(4) トロンビン溶液 トロンビン(シグマ製、牛血漿由来、PRODUCT NUMBER T6634)を0.05 mol/L ホウ砂緩衝液に溶かし、1000 U/mL の濃度の溶液を調製する。少量ずつ分注 し、凍結保存する。使用時に、0.05 mol/L ホウ砂緩衝液で更に50倍容量に薄め る。


(5) 1 mol/L 酢酸溶液 氷酢酸60.1 gに水を加えて1000 mLとする。


(6) 1 mol/L 酢酸緩衝液( pH 6.0 ) 酢酸ナトリウム(3水塩)129.6 gに水を加えて溶かし、1 mol/L酢酸溶液47.6 mL 及び水を加えて1000 mLとする。


(7) 10 % トリトン X-100 溶液 トリトン X-100 10 gに水を加えて加温溶解し、更に水を加えて100 mLとする。


(8) 希釈用液 硫酸カルシウム(2水塩) 0.344 g(終濃度 2 mmol/L)及び塩化ナトリウム0.585g (終濃度 10 mmol/L)に水を加えて溶かし、1 mol/L酢酸緩衝液 2 mL(終濃度 2 mmol/L)、10 %トリトン X-100溶液 0.5mL(終濃度0.005%)及び水を加えて1000 mLとする。 (注2)


器具
(1) 試験管:15 × 150 mm
(2) タッチミキサー:ヤマト科学社製 MT-31
(3) マイクロテストチューブ:エッペンドルフ社製、Safe Lock 2.0 mL
(4) パスツールピペット:例えば、岩城ガラス社製、長さ9インチ


試料溶液
操作法に従って試験する時、測定時の吸光度差が0.04 〜 0.08となるように試料を希釈用液で薄める。その時の試料濃度は0.67 〜 1.33 FU/gである。


操作法
試験管にホウ砂緩衝液 1.4 mL 及びフィブリノーゲン溶液 0.4 mL を量り取り、 37± 0.3 ℃ の恒温水槽で5分間加温した後、トロンビン溶液 0.1 mLを加え、撹拌する。(注3)
この液を 37 ± 0.3 ℃ で正確に10分間放置した後、試料溶液 0.1 mLを加え、5秒間撹拌し、37 ± 0.3 ℃ で放置する。 試料溶液を添加してから20分後及び40分後に各5秒間撹拌し、正確に60分後、0.2 mol/L トリクロロ酢酸溶液2 mLを加えて撹拌し、 更に37 ± 0.3 ℃ で20分間放置する。 この液をマイクロテストチューブに入れ15,000 ×gで5分間遠心する。パスツールピペットを用いて慎重に遠心上清1mLを回収し、 275 nm における吸光度(AT)を測定する。
別に、試験管にホウ砂緩衝液 1.4 mL 及びフィブリノーゲン溶液 0.4mLを量り取り、37 ± 0.3 ℃ の恒温水槽で5分間加温した後、 トロンビン溶液 0.1 mL を加え、撹拌する。
この液を37 ± 0.3 ℃ で正確に10分間放置した後、0.2 mol/L トリクロロ酢酸溶液 2 mL を加えて撹拌し、 更に試料溶液 0.1 mL を加え撹拌する。この液を37 ± 0.3 ℃ で20分間放置し、以下同様に操作して吸光度(AB)を測定する。(注4)


ナットウキナーゼ活性度(FU/g)=(AT-AB)/0.01 × 1/60 × 1/0.1 × D
  D : 試料の希釈倍数



―――――――――― 注 ――――――――――



(注1)フィブリノーゲンのロットが変わる際には、活性度の水準が変わらないようにするため、慎重に確認試験を行い、必要ならば補正係数を導入する。
(注2)本希釈用液は調製後室温で保存し、使用期限を15日間とする。
(注3)撹拌は全てタッチミキサーを用いて行う。
(注4)測定が正しく行われたかどうかを確認するため、測定バッチごとに標準試料を 同時に測定する。


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